緩まないための巻き方・締め方のコツとNG例
ラッシングベルトの基本的な使い方をマスターすることは、荷物の固定作業において最も重要なステップの一つです。特に初心者にとっては、巻き方や締め方に不安を感じるケースが多く、誤った使い方によって荷崩れや荷物破損といった事故につながることもあります。ここでは、正しい締め方のコツと、ありがちなNG例を比較しながら解説します。
ラッシングベルトには大きく分けて「固定側」と「巻き取り側」があり、ラチェット装置にベルトを通し、レバーを動かすことでテンションをかけて固定します。特に注意すべきは、ベルトの「巻き取り方向」と「ねじれの有無」で、これを誤ると力がうまく伝わらず、途中で緩む原因になります。
以下のテーブルは、ラッシングベルトの正しい使い方とNG例を比較したものです。
使用ポイント |
正しい使い方 |
よくあるNG例 |
事故リスク |
ベルトの通し方 |
ベルトをラチェット中央にまっすぐ通す |
ベルトが斜めやねじれている |
巻き込み不良、解除不能 |
巻き方 |
テンションを均一にかけながら巻く |
一気に力を入れすぎる |
ベルトの断裂、荷物破損 |
締め付け具合 |
たわみがなくピンと張る程度 |
緩め、もしくは締めすぎ |
荷崩れ、変形・破損 |
フックの掛け方 |
フック部分を正しい向きに設置 |
フックが逆さまや不安定 |
フック外れによる落下事故 |
最終確認 |
テンション後に軽く揺らして確認 |
巻いたまま確認を省略 |
走行中の緩みや脱落 |
巻き方の基本的な流れとしては、まずベルトをラチェットに通し、緩みが出ないように手で仮締めを行った後、ラチェットのレバーを前後に動かして巻き取り、最終的にしっかりと張られていることを確認します。このとき、ベルトにねじれがあると締まり具合が不均一になるため、常に「平行かつ一直線」を意識することが大切です。
また、締めすぎると、荷物に圧力がかかりすぎて破損することがあります。特に段ボール製品や精密機器などは、締め具合に過剰な力がかからないよう注意が必要です。締め付けの力加減は、荷物の種類やサイズ、重量に応じて変える必要があります。
実際の運送現場では、荷物のサイズや形状が一定でないため、ベルトの「巻き方のクセ」や「荷物ごとのコツ」をスタッフ全員で共有しておくことが事故防止につながります。また、新人ドライバーや補助スタッフが使用する際には、先輩社員による「巻き方の実演」や「NG例の紹介」を取り入れた教育を行うことで、正しい使用方法が定着しやすくなります。
外し方・緩め方がうまくいかないときの対処法
ラッシングベルトの取り外し作業において、「外れない」「戻らない」「ラチェットが固まって動かない」といったトラブルに直面することは珍しくありません。これは、ベルトの巻きすぎや摩耗、締めた状態での経年使用などが原因であり、正しい解除手順を理解していないと無理に力をかけて破損やケガにつながる可能性があります。
ラチェット式ベルトの解除は、一見すると簡単そうに見えますが、実際には構造を理解していないと「どこを押すのか」「どのタイミングで解除するか」が分からず、手間取るケースが多く見られます。
まず、解除する前提として「ラチェット部分の構造」を知っておくことが大切です。ラチェットには、テンションをかけるためのメインレバーと、それを解除するためのリリースレバー(または解除プレート)が備えられています。解除時は、このリリースレバーをしっかり押しながら、ラチェットを完全に開き切ることでテンションを緩める仕組みになっています。
うまく緩められない原因の多くは「巻きすぎ」によるラチェットの過剰テンションです。強く締めすぎると、解除時にベルトが戻りづらくなり、ラチェット機構に無理な力が加わります。これを防ぐには、締める際に「余裕を持ったテンション管理」を意識し、必要以上に締め付けないよう注意することが重要です。
また、ラチェットが固まって開かないときには、潤滑剤(シリコンスプレーなど)をラチェットの可動部に少量吹きかけてみると、スムーズに動作することがあります。それでも解除できない場合は、工具を使用して慎重に分解するか、破損覚悟でベルトを切断する必要があります。ただし、これは最終手段であり、可能な限り事前に故障や異常を発見しておくことが望まれます。
外した後は、ベルトとラチェットの動作確認を行い、汚れや劣化が見られる場合には早めのメンテナンスや交換を検討することが安全維持につながります。
初心者でも安心して取り扱うためには、「締める作業」と同様に「外す作業」も一連のルーティンとして習得することが肝心です。正しい知識と丁寧な扱いによって、ラッシングベルトの性能を最大限に引き出すことができます。